みんなの黒歴史ノート 『 講座1 』


 みんなの黒歴史ノート!....と言っても、かなり抽象的だしちょっと乱暴かなと思ったりもします。ですが僕は黒歴史中二病を前向きで創造的な言葉として捉えています。僕が中二病という言葉を聞いたのは大学を卒業するかしないかの時ぐらいだったと思う、卒業展の絵を描いていてクラスメイトに「絵が中二病ぽ〜い!」と言われてその単語の意味をよく知らないのにムッとした記憶があります。「」と言う部分より「中二」という部分に何か苛立ちを覚えたのかもしれません。画家にとって「病」という言葉はむしろカッコイイ感があります、病的な絵、病的なまでに没頭する、退廃的=イケてる!....が「中二」には幼さやバカっぽさやイカ臭っぽさを感じるので当時、アートをやたら崇高なものとして捉えていた僕には誹謗中傷にしか聞こえなかったのです。

 逆にそういった考えが中二病ぽいとも言えるのですが、まあ中二病の範囲は広げ過ぎると全人類までをもカバーしてしまいそうなので、ここでは十代の頃、神聖なノートに架空の世界・歴史やオリジナル漫画(またはパロディ漫画)、小説、自伝、イラスト、架空キャラクター設定、謎のゲームルール、エログロ、架空の時刻表・鉄道、架空の建築物、架空の乗り物、詩、秘密交換日記、日々の鬱憤記録、反社会的言集etc..を描いていたものにザックリと括りたいと思います。もっと細分化すればもっといろいろなジャンルがあるのかもしれませんが、大まかに分けるとこんなものではないでしょうか。実在の鉄道や路線図を現場まで行って資料を収集したり駅や電車をスケッチする人もいますし、あながち架空であれば中二病だとも言えません、ただスタイルはなんであれ描いてるものや考えてることに独自の視点や情熱、執着、フェティシズム、世界が滲み出ていれば、それは立派な中二病ノートです。実際現物を手に取って見てみないと判断は難しいのですが、ワンピースのルフィやその仲間達をただ模写しただけだと中二病とはいいません。完全にオリジナルではないけどドラゴンボールの存在しない物語を漫画で描いたらそれはもちろん創造性豊かな中二病です。中二病なんてルールや業界、産業、団体は存在しないので中二病選球眼は今のところ直感に頼る所が大きいです。ただ言えることはそれを見て恥じらいや懐かしさ、おくゆかしさ、畏怖の念、創造性、描いた人の人間性を感じたら、そうと言えるのではないでしょうか。

 そして、実際こんなことをやっていた人は結構多いのではないでは?もちろんこの僕も架空の歴史という怪しいノートを隠れて夢中になって描いていました。架空の歴史ノートはコアすぎて友達には見せれなかったのですが漫画ノートや架空のゲームブックノートなどは友達に見せていたし友達の漫画ノートと交換していました。しかし、やはり中学の高学年になるとみんなその事はタブー扱いとなり、僕もほぼ創作活動を放棄します....

 でも分かるんです、カッコわるいんです...恥ずかしいんです! でもだから味わい深いものとなるんです。罪にも近いあの感じ...本当は遠い遠い忘れ去られるべき記憶の奥底にある黒い歴史が沼地からぶくぶくと浮かんで来てしまったあの衝撃。

 しかし、僕は美大に入り絵を描く事でその代償を求めていたところがあります。絵と言う枠組みの中でなら正当に堂々と自分の創造性をいかんなく出せると思ったからです。芸術家や漫画家、小説家、ミュージシャン、起業家だってそうかもしれない、中二病を活かせる受け皿はいっぱいあります。でも、ある時ぼくは衝動的にそういった、より高いものに昇華される前の多くの人々が持つただ純粋に何か創造したいと願うあの衝動の産物をまた再考・再現したいと思ったのです。僕にとってはそれがあの架空の歴史ノートなのです。

 これは後者か前者がピュアだとかそういう事を言いたいにではなく、今一度、自分の描いている架空の歴史ノートとまだ世に隠されているであろう黒歴史ノートを発掘し再考する旅に出てみようと思ったのです。最近改めてそう思ったのが太宰治の妄想ノートが発見されたという記事をネット上で発見し、記事自体は一年くらい前のものなのですが、そのノートの新鮮さに驚いたことです。90年くらい前の大正時代の妄想ノートなのに最近の子が描いた様な時代が変わっても変わらない人の純粋な想像性に驚きました。

太宰治のノート

自分の架空の歴史ノート

太宰治のノート

架空の歴史ノート

太宰治のノート

太宰治のノート

太宰治のノート

架空の歴史ノート

奇妙だけど、こうやって見ると昔の人、今の人という区別が何だかよく分からなくなってくる....
ノートだけに限定せずに奇妙で妄想力溢れる本が無いかともっと探してみると世界にはそんな本で溢れている。

「ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で」






最近になって公開されたヘンリー・ダーガーの非現実の王国。もはや中二病・黒歴史界隈ではビックネームな存在。
約60年間に渡り1万5000ページの文章と、多くが3メートル近くある挿絵300点を描いた桁外れの小説。19歳から1973年まで死亡する半年前まで書き続けられた。小説は膨大でまだ全貌は解明されていないが絵画がの方は数千万円で取引されている。

「ミンガリング・マイクの妄想レコードの世界



媒体がノートや本では無いけど僕の中で無視できない人物。
ある男がワシントンの蚤の市で大量の奇妙なレコードを発見する。それらを大量に購入した男は愕然とする。それは制作者が作った架空のレーベルの聞いたこともないヒット曲たちであった(あくまで彼の空想世界でのヒット)。それらはミンガリング・マイクと名乗る、引きこもり黒人マイクが自宅で制作した手書きのジャケットに手作りレコード、詳細なライナーノーツの類い希な妄想力によって作り上げられた驚くべき世界。
Amazon ミンガリング・マイクの妄想レコードの世界

「コデックス・セラフィニアヌス」



最近、こういった本を調べていて発見したかなり自分好みの本。イタリア人アーティスト、ルイージ・セラフィーニによって描かれた別世界の百科事典の本。文字は自らが考案したもの。ゆえに架空創作物というコンセプトが徹底している。上記の二人とタイプが違ってどちらかというとエリート系。
Amazon コデックス・セラフィニアヌス

「赤の書」




第一次世界大戦を前にして精神状態が不安定になったユングは黒い表紙のノートに自分がみた夢やビジョンを書き記し、その後、ユング自身の手で赤い表紙のノートに書き写された。ユングは心理学者である。
Amazon/赤の書-―The“Red-Book”-C・G・ユング/dp/4422114360

「ヴォイニッチ手稿」


1914年にイタリアで発見された14世紀から16世紀頃に作られたのではないかと思われる古文書。未知の文字と記想像上の植物の絵で構成されている。
wiki/ヴォイニッチ手稿

 「リプリー・スクロール」





錬金術師として活動していたアウグスティノ会修道士ジョージ・リプリーの名前に由来する巻物。

「メンドーサ写本」

マヤ、アステカなどの絵文書。

「The Book of Soyga」

16世紀に書かれた魔術に関する論文。

その他の書物

ここに載ってない書物やまとめられてないものもまだまだありますケルズの書とか。ここに上がっているものは、もうすでにかなり価値付けされているものばかりですが、時代がバラバラで内容は分からなくても面白いし、人が持つ想像力は果てしないなと感じます。かなり無理矢理、黒歴史や中二病の範囲を広げてしまったかなとも思いますが。友達が描く妄想ノートなどを見たときと似たような感覚で見ているから惹きつけられられるし、言葉や図の意味が分からなくても多くの人と共有できる部分があるのだと思います。

そして、これらほどの知名度や価値がなくても今のリアルな架空・妄想本がかなりの率で世に隠れているのでは無いかと思い身近な所から調査してみることにしました。
つまり「みんなの黒歴史ノート大調査」。
漠然と面白そうだと考えた事でどうなるのか未知数ですが、今のところ取材とは大袈裟だけど、資料を提供していただいた四人の方々のノートを紹介していきたいと思います。ちなみにこれは人の恥部を晒すものではありません。誰もが何かを創造しようとする人のエネルギーと衝動・純粋性の核の部分を垣間見るスリリングな冒険です。

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